事故の話・その１

１９９０年６月９日・午前３時。イギリス。
夜勤の整備担当すみす(仮名)は早朝６時半に飛び立つ予定の飛行機の整備を始める。
書類にざっと目を通すと、フロントガラスの交換時期に来ていた。
フロントガラスは９０本のボルトで固定されている。
…フロントガラスだけを換えるか。
…時間はあるんだし傷んだボルトも交換しておくか。
素早く足場を組み立て、フロントガラスを外し始めるすみす(仮名)。


ボルト９０本中８４本が「７Ｄサイズのボルト」、
残りの６本は７Ｄサイズよりやや長く、太さは同じの「８Ｄサイズのボルト」が使われていた。

７Ｄの何本かは傷んでいたので交換しなければならない。

すみす(仮名)は７Ｄボルトを１本つまむと、倉庫に向かう。
倉庫には７Ｄボルトの在庫がほとんど無かった。

す(仮名)　「７Ｄはもう無いのか」
倉庫担当　「旦那、あの窓に使うのは８Ｄのはずですぜ」
す(仮名)　「じゃあ８Ｄはあるのか」
倉庫担当　「いんや、８Ｄもほとんど在庫無いですぜ」

さて困った。

より大きなパーツセンターは３ｋｍ先。
すみす(仮名)はクルマを飛ばし、パーツセンターに向かった。
…が、このパーツセンターでは部品の整理がいい加減で、照明も暗かった。
暗闇の中、時間はかかったもののすみす(仮名)は何とか７Ｄボルトを探し当て、
大急ぎで飛行場へ戻る。
残された整備時間はあとわずか。

(つづく)